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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』65

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-23 16:47:14

赤坂さんとのディナーの日、夕方になって私は家を出た。

指定されたホテルへ電車で向かう。

白いコートの中に着ているのは、紺のワンピースで裾がふわりと膝丈で揺れている。

それにピンクベージュのパンプスを合わせた。

赤坂さんに会えるのが久しぶりで素直に嬉しい。だけど、ネックレスはしなかった。

お母さんがあんなにも真剣に反対するのだ。

心にある『好き』という気持ちがあることが、悪い気がする。

ホテルへ到着して名前を告げると部屋番号を教えてもらった。

緊張しながら部屋へ向かうと、あまりの広さに足がすくんでしまう。

「……な、なにここ」

つぶやいた私は奥へ進んでいくとダイニングテーブルセットがある。上質なヨーロッパ家具で揃えられていた。

ソファーに座っているが落ち着かない。

赤坂さんはまだ来ていなかった。ここに一人でいるなんて心細い。

立ち上がって部屋を見て回る。

ベッドルームにはキングサイズのベッドが堂々と置かれていた。リビングに戻って窓から景色を見下ろすと、東京の夜景が一望できる。

赤坂さんったらまた立派なホテルをチョイスしたようだ。ぼうっと景色を眺めながら考えている。万が一……告白されたら……。

断りなさいと真剣な表情で言っていたお母さんの言葉を思い出した。だから、あえて今日は赤坂さんからプレゼントされたネックレスはしてこなかったのだ。

「久実」

背後から声が聞こえて振り返ると、赤坂さんが立っていた。

いつの間に入ってきたのだろうか。気がつかなかった。

シャツにジャケットを着ていてスラックス姿の赤坂さんは、テレビでよく見慣れているのだが生で見ると本当にカッコイイ。

「遅くなってごめんな」

「いえ」

「退院おめでとう」

「ありがとう」

優しい表情が一変。

悲しそうな視線を向けてくる。

「……ネックレスつけてこなかったんだな」

「うん……」

「残念だ」

私の隣に立って景色を見る赤坂さん。

「景色、見てたのか?」

「うん。すごく立派なホテルだなーと思って」

「記念日くらい、いいホテルにしたいじゃん」

おもむろにつぶやいてソファーに座った。

記念日って。

退院記念日ってことだよね?

振り向いて赤坂さんを見る。

「どうする? 食事にするか? もう少し後にする?」

「あ……うん、お腹減っちゃったかな」

「わかった」

立ち上がった赤坂さんは電話で食事の準備をお願いしている。どうやら部
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